20160523

例会まとめ 『君が生きた証』



kimigaikita01





 4月例会『君が生きた証』は如何でしたでしょうか?
 この映画は音楽の演奏シーンの占める割合が高く、それゆえ好みが分かれてしまうのではと懸念しておりました。
 しかしアンケート結果ではその音楽を絶賛する声が多く、「大変良い」と「良い」が合わせて95%と高評価を頂き、この映画を例会にすることができて本当に良かったと思っています。
 ところで何人かの方から、息子の犯罪の動機が全く分らないといった意見を頂きました。確かにこの映画ではそこはあえて全く描いていません。
 銃乱射の犯人の心境を描く映画となったら、それはまた別の映画となるでしょうし、それよりこの映画で描きたかったのは、犯罪加害者を身内に持ってしまった家庭の問題と、息子のことを実は全く分かっていなかったという完全なる父親視点を観客にも共有させる試みだったと思います。
 また犯罪者が作った音楽(芸術)をどう評価していいのか?といった問題もこの映画には含んでいます。
 理屈の上では作品は単純に作品として評価されるべきであって、作者の人間性とは関係ないはずです。しかし殺人者が作った芸術がいくら素晴らしい作品だからといって、被害者の家族などにとってそれは許されるものではないでしょう。
 最後のシーンで父親が、「銃乱射をして死んだ息子が作った曲です」といって歌い始めます。店にいる人たちは一瞬にして凍りつきますが、それでも曲に聴き入っているところなど、そういった問題を考えさせられます。
 あと、楽器店の店主がヨットをもらうシーンがよく分らないという意見も頂きました。あれは店主にヨットを売って、サムは楽器店を買い取っています。
 楽器店の店主として第二の人生を歩み始める決心をしたサムの幸せを、こちらも心から願ってしまいますね。





(北九州の泉 2016年2月号搭載)