20161124

例会まとめ 『百円の恋』



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 10月例会「百円の恋」は如何でしたでしょうか?
 この映画は当初とても小規模に公開されましたが、その後口コミなどによって評価はだんだんと高まっていき、最終的には日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞と最優秀脚本賞を受賞するまでとなりました。
 それでも多くの人は観ていないだろうと思い、リクエストをして例会となった次第です。
 しかし物語の特に前半部分は登場人物たちがとてもやさぐれているので、拒絶反応を示す人も多いのではないかと危惧していました。
 ところがアンケート結果では「大変良い」と「良い」が合わせて90%以上となり、一口感想では自分からはこういった映画は観ないだろうといった人からも賞賛の声を多く頂き、会員さんは意外と熱い心を持った人が多いのだなと嬉しくなりました。
 普段観ない映画を観るという点からも、この映画を例会にすることができて良かったと思っています。
 ところで最後の場面で一子が男に甘えすぎているのではないかという意見を何人かの方からお聞きしました。
 しかしどうでしょう。全身全霊をかけて臨んだ試合でボロボロに負けた経験のある人には分かると思うのですが、そういった時には茫然自失の状態になります。
 そして何かのきっかけで(この映画の場合は男が待っていた)、堰を切ったようにオイオイ泣いてしまうといったことはあると思います。
 しかしそれは弱さではないでしょう。以前の一子は自信のない自分を守るために、心をガチガチに閉ざしていました。だから妹から痛いところを突かれると怒り狂ったりもしました、
 しかし最後で殻のない自分をさらけ出せたのは、ボクシングを通じて確かな自分というものができた強さ故ではないでしょうか。
 裸の魂をぶつけられると、ぶつけられた方も怖いものです。狩野のあれだけの長い沈黙の後に一子の手を取るところは、彼もまた逃げずに彼女の気持ちを真正面から受け止めたのだと思えました。





(北九州の泉 2016年12月号搭載)