20181221

例会まとめ 『ドリーム』



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 この映画の原題は「HIDDEN FIGURES」といって「隠された人物(または数)」を意味します。1960年代のソビエトとの宇宙開発競争が激化する中で、NASAを支えた黒人女性たちがいたという、アメリカ人ですら知らない事実を描いたこの映画をよく表している題と言えるでしょう。
 また、有人宇宙飛行計画“マーキュリー計画”に従事した7人の宇宙飛行士を描いた名作「ライトスタッフ」の裏方の話とも言えます。宇宙飛行士のジョン・グレンが技術スタッフたちに親しく接見してくるシーンは、まさに2つの映画が交差している瞬間ですね。
 ところでこの映画の優れた点の一つとして、人種差別というものがいかに無意味で馬鹿げたことかということを、誰にでも分るように描けている点にあると思います。NASAのような組織でさえ1960年代当時にはこんな人種差別があったのかとこの映画を見て驚くのですが、史実としてNASAにおける人種差別の撤廃は、他の組織に比べると圧倒的に早かったということです。それもそのはずです。能力を第一としている組織にとって、人種差別なんていうものは無意味でしかないからです。
 スポーツの世界も同じように人種の壁が早く取り省かれていきましたが、野球やフットボールのチームを強くしようとすれば、人種なんて関係なく能力の高い人を使うのは当たり前です。
 要するに能力のある人や組織は人種差別なんてしない。ということは逆に人種差別をしてくる人や組織というのは、自分らには能力がないということが分ります。自分には能力がないけど、なんとかして自分より下の人間を作ろうとしている人たちです。なんて醜悪なのでしょう。
 私たちは「ドリーム」の黒人女性の主人公たちのように、または黒人専用と書かれたプレートをたたき壊すケビン・コスナーのように、かっこよくありたいものですね。





(北九州の泉 2019年1月号搭載)