20201101

例会まとめ 『洗骨』



senkotu





 9月例会「洗骨」はいかがでしたでしょうか? コロナ渦の中、そして戸畑では平日の市民センターでの上映といった条件にも関わらす、参加率も60%を超えましたので、みなさんの邦画への期待の高さを改めて感じました。この映画を例会にすることができて、本当に良かったと思っています。
 「洗骨」の監督は、ご存知の通りガレッジセールのゴリさんですが、芸人さんがちょっと映画を撮ってみたというレベルでは全くないですね。素晴らしい映画監督だと思います。まず冒頭から、奥田瑛二演じる信綱の駄目っぷりがとてもいいです。これで物語に引き込まれていきます。そして、この映画では対立する物(者)をとても上手く配置していますね。大自然の開放的な粟国島に対して、締め切って暗い信綱の部屋。優柔不断な信綱に対して、即断即決で全てを仕切る姉。世間体を気にする長男に対して、自分の気持ちに正直に生きる妹。あの世とこの世。生と死などなど。
 また、とてもセンシティブな洗骨という儀式を知らない人に伝えるのはすごく難しいことだと思うのですが、この点も見事です。ともすれば、何かおどろおどろしい土着の奇習として見られてしまう恐れがあると思いますが、そこは沖縄生まれで郷土愛溢れるゴリ監督。死者への尊厳と生を受け継いでいく人間ドラマとして、これ以上ない形で映画として我々に伝えているのではないでしょうか。最後に流れる「童神」を聴きながら身を浸していると、自分は、そして誰もが地球の一員なのだと思えてくる、そんな感情が込み上げてきます。
 とにもかくにも素晴らしい日本人監督の登場です。次回作も期待していますよ、ゴリさん!





(北九州の泉 2020年11月号搭載)