20210501

3月例会まとめ 『まぼろしの市街戦』



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 3月例会は久しぶりの古典の上映となりました。50年以上も前の作品ですが、全く古さを感じませんでしたね。
この作品は1966年のフランスでの公開時はほとんど話題になりませんでした。しかしその後アメリカのフラワームーブメントでのヒッピーたちや、ベトナム反戦運動の若者たちからの圧倒的な支持を得て超ロングランを記録していき、カルト映画の金字塔とまで呼ばれるようになりました。そして今に至るまで多くの人に影響を与えて生涯ベストに選ぶ人も少なくありません。なぜこれほどまでに時代を超えて心に響く作品となっているのでしょう?
それはこの映画が今までにない反戦映画で、これまでとは全く違う価値観を示した先駆的な作品だからだと思います。この映画以前にも、例えば『西部戦線異状なし』のような優れた反戦映画はありました。しかしそれらは厭戦的で、運命には逆らえない個人の悲劇を描いているものばかりです。しかし本作では理不尽な命令で人を殺すくらいなら自ら精神病院に入る選択をするのです。自分の意志で運命に逆らう点が全く違います。
一部の人から、「逃げるだけでは何の解決にもならない」といった感想を聞きました。確かにその通りだと思います。しかし何かに対しての戦いはまた新たな悲劇を生みます。そうではなくこの映画は、例えばジョンレノンの『イマジン』のような世界。戦いもなく誰もがその日その日を平和に暮らしている、そんなユートピアをほんの一瞬だけでも感じさせてくれるから、これほどまで魅入られるのかもしれません。
それにしても美少女コクリコを演じたジュヌヴィエーヴ・ビジョルドは良かったですね。彼女に毎日会えるのなら、僕も精神病院に入っちゃうなあ。





(北九州の泉 2021年5月号搭載)