20220502

3月例会まとめ 『レ・ミゼラブル』



Les_miserables





 3月例会はフランスの低所得の移民たちの問題をリアルに描いた作品でした。緊迫感があってすごく楽しめたのですが、私は見終わった後はとても複雑な気持ちになりました。というのも、この映画が訴えている移民問題の解決策が何一つ思い浮かばないからです。
 近年ヨーロッパでは移民の数が増えすぎて様々な問題が噴出しています。資本家や大企業経営者の多くはグローバリストで、まだまだ多くの移民を受け入れようとしています。なぜなら安い賃金で働く労働者が欲しいからです。そしてお金持ちの彼らは高級住宅街に住んでおり、実生活において移民たちと交わることはないので、貧民窟の治安の悪さなど全く問題ではありません。しかしいつの時代もそうで、貧困からおこる実社会のいざこざは恵まれない者同士が対立する構図となっているものです。この映画でも治安維持部隊の警察官たちと移民たちの対立が描かれていますが、警官たちも裕福な支配者というわけではありません。また子供たちも怒りによって暴動を起こしますが、彼らの生活圏の中での暴動なので、ある意味何も変えることはできません。自分たちの環境を悪くするばかりです。まさに映画のタイトル、「レ・ミゼラブル」ああ無情といった想いです。
 ヨーロッパでは今後も多くの移民を受け入れていくのでしょうか?それとも極右政党が台頭してきて移民排除の方向へと向かうのでしょうか?どちらにせよその両極端はとても危険です。たぶん最善の策はその中間の程よいバランスで少しずつ改善していくといった、すごく地道で骨の折れる作業でしかないのかもしれません。
 日本も今後は労働力を補うために海外からの移民を増やしていくというのが、政策の基本方針とされています。しかし実際の問題が大きくなってからの解決は非常に困難だということを、この映画を観て強く感じました。





(北九州の泉 2022年5月号搭載)